「うちの営業、歩合をもう少し上げてあげたいんだけど、いくらが妥当ですかね」——経営者の方とお話ししていると、本当によく出る質問です。現場あるあるですが、エース営業から「他社はもっと出してますよ」と言われ、社長としては応えてあげたい。でも経理からは「これ以上は無理です」と止められる。結局、なんとなく業界相場っぽい数字で落ち着く。
正直に言うと、この「なんとなく」が一番危ない領域です。営業 歩合 インセンティブ 設計の議論は、感覚論で進めるとほぼ確実に粗利を食い潰します。今回はその上限線をどこに引くべきか、極めてシンプルな数字で整理してみます。
視点のフレーム:歩合は「粗利の分配」である
インセンティブ設計の議論で多くの会社が見落としているのは、歩合は売上から払うのではなく、粗利から払っているという事実です。販管費の中に人件費が含まれる以上、営業に渡せるお金の原資は粗利しかありません。
営業の歩合とは、粗利のうち何%を営業個人に分配し、残り何%を会社に残すかという「分配比率の決定」である。
この視点に立つと、議論は一気にクリアになります。歩合率の上限は、業界相場でも競合他社でもなく、自社の粗利率です。粗利率40%の会社が歩合40%を払えば、会社の取り分はゼロ。50%払えば赤字。つまり、粗利率を超える歩合は理論上ありえません。
そして実際には、基本給・オフィス・管理コストも粗利から支払う必要があるので、「歩合に回せる上限」はさらに低くなります。
数字で見ると
具体的に見てみましょう。年間受注3,000万、粗利率40%の営業1名のケースで試算します。
項目 | 金額 |
|---|---|
年間受注 | 3,000万円 |
粗利率 | 40% |
粗利 | 1,200万円 |
基本給 | 360万円 |
歩合(受注の5%) | 150万円 |
営業の支給合計 | 510万円 |
会社の利益(粗利−営業支給) | 690万円 |
歩合5%という設計は、現場感覚では「ちょっと少ないかな」と感じる水準だと思います。営業本人も「もっと欲しい」と言うでしょう。
では、思い切って歩合を上げたらどうなるか。同じ条件で、会社利益がゼロになる歩合率を逆算すると、なんと**28%**です。受注3,000万に対して歩合840万、基本給360万を足すと営業支給1,200万、会社利益0。
「28%まで出せるなら、10%くらいなら全然いける」と思われるかもしれませんが、ここに販管費・オフィス費・管理部門コスト・将来投資が乗ってくることを忘れてはいけません。会社利益690万のうち、純利益として残るのは結局そのごく一部です。
では何をするか
打ち手はシンプルです。
1つ目は、自社の粗利率を全営業マネージャーが言えるようにすること。意外と知らないものです。粗利率を共有資産にすることで「歩合は粗利の分配」という共通言語が生まれます。
2つ目は、エース個人の歩合交渉ではなく、全営業を通した分配設計として議論すること。1人の優秀な営業に高歩合を出すと、他のメンバーへの波及で人件費が一気に膨らみます。
3つ目は、固定給と歩合のバランスをシナリオで見ること。同じ営業支給510万でも「基本給500万+歩合10万」と「基本給360万+歩合150万」では、営業の行動とリスクが全く違います。
ここまで考えるべき変数が多いと、頭の中だけで設計するのは正直しんどいです。だからインセンティブ設計シミュレーターで、粗利率・基本給・歩合率を入れて会社利益との分岐点を見える化してみるのが手っ取り早いです。「この設計だと会社利益が業界平均まで改善した場合との差はどれくらいか」も合わせて確認できます。
まずは自社の分岐点を可視化してみてください
インセンティブ設計は、営業のモチベーションと会社の利益という、本来トレードオフな2つを同時に最適化する難題です。だからこそ、感覚や相場ではなく、自社の粗利率を起点にした分配設計の議論が必要になります。
まずはインセンティブ設計シミュレーターで、現在の設計と「会社利益ゼロになる歩合率」の距離を確認してみてください。そのうえで、自社にとって最適な分配比率の議論をしたいというご相談があれば、営業コンサルティングでご一緒できればと思います。
ご注意:業界ベンチマーク値はAIによる推定の参考値です。計算結果は入力値に基づく試算であり、実際の成果を保証するものではありません。「業界平均まで改善した場合との差」は、あくまで参考値との比較である点をご留意ください。
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